実戦解説:イングランド・ギャンビット

Rochan_to_Danke
FM Rochan_to_Danke
Nov 25, 2014, 2:34 PM |
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皆さんこんにちは!今回も某チェスサイトで見つけた面白い試合から、色々と学んでいきたいと思います。この試合は持ち時間1分+1手20秒加算という、非常に興味深いタイムコントロールで行われました。

Anonymous (2245) VS Anonymous (1968)

1.d4 e5!?

Diagram after 1...e5!?

1.d4に対して1...e5とポーンを犠牲にするこのオープニングはイングランド・ギャンビット(Englund Gambit)。この定跡の名前は国名ではなく、スウェーデンのチェスプレーヤー、Fritz Carl Anton Englund氏の苗字から来ています。白はポーンを取った後にNf3などと駒を展開しながらe5のポーンを守り、それに対して黒が2...Nc6から3...Qe7とポーンを取り返そうとするのが一般的な指し方で、黒は序盤にクイーンを動かし黒マスビショップの展開の道を塞いでしまうような形になるため、客観的に見ればこのオープニングはあまり良いものではないでしょう。ただし、実戦的な罠がある変化がいくつもあるので、油断は禁物です。

2.dxe5 f6?!

Diagram after 2...f6?!

キング回りの斜線を弱める2...f6はこの変化でほとんど指されていない一手。白のビショップがc4に来られると、黒はキャスリングをすることができなくなってしまいますね。ここでは2...Nc6と一旦e5のポーンを攻撃し、白の出方を見たほうがいいでしょう。

2...Nc6 3.Nf3 Qe7 4.Qd5!? f6!

Analysis diagram after 4...f6!

白が序盤にクイーンを動かしてまでe5のポーンを守る4.Qd5には4...f6が好手。4...f6はe5のポーンを攻撃するだけでなく、5.exf6に対して5...Nf6と取ることで白クイーンを攻撃し、テンポを得ながら駒の展開でリードを得るという狙いがあります。5.exf6から正確に指せば白の方がやや有利になるはずですが、序盤で展開のリードを奪われるのは少し危険なので、4.Qd5から進む変化を知らないのであれば4.Nc3と駒を展開し、堅実に指したほうがいいでしょう。

4.Nc3 Nxe5 5.e4

Analysis diagram after 5.e4

次に白マスビショップを展開すればキャスリングの準備が整う白に対し、黒はe7のクイーンが黒マスビショップの展開を妨げてしまい、中々キャスリングをすることができません。更に、黒は将来的な白のNd5という、クイーンとc7のポーンを攻撃する手なども心配しなければいけませんね。あまり知らない変化を指された場合、序盤ですべきことに従って序盤を乗り切るというのは、実戦的に有効な作戦の一つです。では、2...f6と進んだ本譜に戻りましょう。

3.e4 Nc6 4.Nf3 Bc5 5.Bc4!

Diagram after 5.Bc4

白は相手の駒の展開を助ける5.exf6ではなく、序盤ですべきことに従って白マスビショップを展開し、c4-g8の斜線を睨ませながらキャスリングを準備しました。そしてこの手は5...fxe5とポーンを取る手に対し、罠を仕掛けています。この記事を読んでいる皆さんはそれが何か分かりますか?

5...Qe7

Diagram after 5...Qe7

黒はクイーンを動かすことでc5のビショップに紐をつけ、e5のポーンにプレッシャーをかけながらf7の地点の守りを補強しました。5...fxe5とポーンを取る手に対しては、6.Bxg8が駒得を決める一手です。

5...fxe5? 6.Bxg8!! Rxg8 7.Qd5!

Analysis diagram after 7.Qd5!

d5のクイーンはc5のビショップとg8のルークにフォークをかけています。7...Bb4+に対しては8.c3とチェックを防ぎながらビショップを攻撃することができるので、白は駒得することができますね。では、本譜を見ていきましょう。

6.0-0 fxe5?!

Diagram after 6...fxe5?!

黒は、ここでは6...fxe5ではなく6...Nxe5と指し、ナイトを一組交換すべきでした。黒の守りが薄いキングサイドの攻めに参加できるf3のナイトとクイーンサイドでくすぶっているc6のナイトの交換は、黒にとって得だと言えるでしょう。このように、攻め込まれる可能性のある側は駒をできるだけ交換し、相手の攻めを緩和するのが良い作戦です。

7.Nc3 Nf6 8.Bg5

Diagram after 8.Bg5

黒はポーンを取り返しましたが、駒の展開とキングの安全性で圧倒的な差をつけられています。白は8.Bg5とf6のナイトをピンし、次にピンされている駒を集中砲火するNd5という手を狙っていますね。

8...Na5 9.Nd5 Qd6 10.Bd3 0-0

Diagram after 10...0-0

黒はキャスリングをするために8...Na5とc4のビショップを攻撃し、それをd3に引かせてキャスリングをしましたが、白の攻めはまだ止まりません。10...Nxd5とナイトを取る手に対しては、白は11.exd5と取り返し、c3-b4突きを狙うことでアドバンテージを得ることができます。

10...Nxd5 11.exd5 0-0? 12.c3!

Analysis diagram after 12.c3!

a5のナイトとc5のビショップの逃げ場が少ないのがポイントで、白は次にb2-b4と指せばフォークをかけることができますね。d5のポーンも、d1のクイーンが間接的に守っているため、黒はこれを取ることができません。この局面は、白勝勢でしょう。では、10...0-0と進んだ本譜に戻りましょう。

11.Bxf6 gxf6 12.Nh4!!

Diagram after 12.Nh4!!

12.Nh4は一見ナイトを盤の端に動かすだけの手ですが、この手はクイーンの道を開けながら、味方のポーンに守られ、相手のポーンに攻撃されることのない拠点にナイトを据える準備をしています。f5のナイトは黒クイーンを攻撃しながらg7、h6などといった黒キング回りのマスをコントロールし、白の攻めをサポートする重要な駒となるでしょう。

12...Bb6? 13.Nf5 Qe6 14.Qg4+ Kf7

Diagram after 14...Kf7

12...Bb6はクイーンをe6に逃がした後にc7のポーンを守る一手ですが、黒にはクイーンサイドを守っている余裕などありませんでした。基本をしっかり守って駒を拠点に配置した白は、クイーンを出動させてキングサイドでの攻めを狙います。

15.Qh5+ Kg8 16.Nde7+

Diagram after 16.Nde7+

16.Nde7+と、白の二つのナイトが黒キングを仕留めにかかります。黒の駒の大半はクイーンサイドにあり、黒はこの猛攻を受け切ることはできません。

16...Kh8+ 17.Ng6+ Kg8 18.Qh6! Rf7

Diagram after 18...Rf7 白番次の一手は?

白はf8のルークを無視し、クイーンをh6まで進めて更に攻めを狙いました。次にhxg6とg6のナイトを取られると黒キングを仕留めるのに時間がかかりそうですが。。。この記事を読んでいる皆さんは、ここで白が指した絶妙手が分かりますか?

19.Qg7+!! Rxg7 20.Nh6#

Diagram after 20.Nh6#

クイーンを捨てる19.Qg7+が、h6のマスを開ける絶妙手!最後はクイーンダウンながら、白の二つのナイトが協力して黒キングの逃げ場を奪い、チェックメイトを決めました。黒は2...f6や6...fxe5など所々にミスがありましたが、それを正確に咎めた白の指し方は素晴らしかったと思います。では、この試合から学べることを少しまとめてみましょう。

  • 1.d4 e5と指すオープニングをイングランド・ギャンビットと呼ぶ。
  • イングランド・ギャンビットには実戦的な罠がある変化がいくつもあるが、序盤ですべきことに従えば白が優勢を築くことができる。
  • 攻め込まれそうな側は攻めを緩和するため、駒交換を目指す
  • 味方のポーンに守られ、相手のポーンに攻撃されることのないマスを拠点と呼ぶ。
  • 拠点に配置された駒はどかされにくく、攻めの軸として活躍できる。

今回の解説は以上です。また次の記事でお会いしましょう!