実戦解説:フレンチ・ディフェンス

Rochan_to_Danke
FM Rochan_to_Danke
Nov 27, 2014, 2:35 PM |
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皆さんこんにちは!最近はAndroidアプリ、チェスヒーローズの登場や電王戦特別企画であるカスパロフと羽生さんのチェスマッチなど、日本でのチェスに関する動きが大きくなってきていますね。

チェスヒーローズはリリース当初は人も少なく、非課金勢の一日の試合上限である10試合のほとんどがAIとの対戦だったりしていましたが、今朝見た限りでは既に1000人を超える人数が登録しており、対人戦の割合が増加してきています。このアプリの監修を務めたプロチェスプレーヤーの小島さんを始めとした、日本のトッププレーヤーと対局できるチャンスがあるのも魅力の一つだと言えるでしょう。Chess.comのアプリと比べると機能が圧倒的に少ないですが、逆にそれが手軽さを生み出しており、デフォルトの持ち時間10分の設定と合わせて裏で作業をしながら手軽にチェスを指せるということを可能にしています。課金しなければ一日10試合しか対人戦が出来ないという大きな欠点を除けば、常に作業(ゲーム)をしている自分にとっては中々使い勝手のいいアプリだと思います。12月下旬にiOS版のリリースが予定されており、それに合わせて更なるプレイ人口の増加が予想されるので、これからもチェスヒーローズの動向に注目していきたいですね。

さて、今回も某チェスサイトで見つけた面白い試合から、色々と学んでいきましょう。この試合は持ち時間10分+1手2秒加算で行われました。

Anonymous (2291) VS Anonymous (2165)

1.e4 e6 2.d4 d5

Diagram after 2...d5

この試合はGreg Shahade VS 羽生さんと同じ、フレンチ・ディフェンスで始まりました。e6のポーンは白マスビショップの道を塞いでいますが、その分d5のポーンのサポートが増しており、防御力が格段にアップしています。

3.Nc3 Bb4

Diagram after 3...Bb4

3.Nc3に対して3...Bb4という手で、試合はフレンチ・ディフェンスのWinawer変化に突入しました。黒は黒マスビショップを展開しキャスリングの準備をするだけでなく、c3のナイトをピンすることにより次にdxe4とポーンをただ取りする手を狙っています。対する白は将来的にQg4と指し、守りの薄いg7のポーンを狙いながらキングサイドでの攻めを狙うのが一般的な指し方です。

4.e5 c5 5.a3 cxd4!?

Diagram after 5...cxd4!?

黒の5手目で最も良いとされている手は5...Bxc3+とナイトを取る手で、黒マスビショップを手放す代わりに白にダブルポーンを作らせることでバランスを取ることができます。5...cxd4でも似たような形になりますが、ポーンの交換が行われることで局面が開いてしまい、白のダブルビショップが活躍できる斜線が増えてしまいますね。更に6.axb4とされるとaファイルが開いてしまい、白はa1のルークを使ってクイーンサイドから攻めを作ることが可能となります。これらの理由から、5...cxd4はトップクラスの試合ではあまり指されていません。

6.axb4 dxc3 7.Qg4!?

Diagram after 7.Qg4!?

白は7.bxc3と開いたcファイルにダブルポーンという弱点を作るより、ポーンを犠牲にして攻めを狙いました。このクイーンは同時にb4のポーンを守る役割も果たしていますね。白はポーンダウンですが黒マスや両サイドからの攻めが狙え、ポーンの代償は十分だと思います。

7...cxb2 8.Bxb2 g6 9.Bd3

Diagram after 9.Bd3

黒は8...g6と指すことでg7のポーンを守りましたが、駒の展開ができておらず、黒マスが更に弱くなっていますね。白は9.Bd3とビショップを展開し、将来的にh4-h5とポーンを伸ばしてどこかでhxg6からBxg6とビショップを犠牲にして攻める手筋を用意しています。

9...Nd7 10.Nf3 Nb6?! 11.0-0

Diagram after 11.0-0

黒の10...Nb6という手は駒の展開が遅れているのに同じ駒を二度動かす、非常に不自然な一手です。ここでは10...Ne7ともう一つのナイトを展開し、状況に応じてNc6やNf5と跳ねる下準備をしていた方が良かったと思います。それに対する白の11.0-0は、キングの安全を確保し焦らずじっくり指そうという一手。ここでは11.Bd4と指し、b6のナイトとその先にあるa7のプレッシャーをかけながら将来的なBc5と黒マスを完全に支配する手を用意する手でも良かったでしょう。

11...h5!?

Diagram after 11...h5!?

黒の11...h5という手は一見g6のポーンの守りを薄め黒マスを更に弱くする一手ですが、将来的にg8のナイトをf5に配置した時に、h5のポーンが白のg2-g4とポーンを突いてナイトを攻撃する手を防いでいます。しかし、黒マスの弱さが長期的な弱点として残ってしまうのはやはり苦しく、この局面では既に白が相当指しやすいでしょう。

12.Qf4 Nh6 13.b5!

Diagram after 13.b5!

13.b5はa3-f8の斜線を開き、次にBa3と指すことで黒のキャスリングを防ごうという狙いです。h6のナイトの紐が外れてしまうため、黒は13...0-0と指すことはできませんね。黒には白の黒マスビショップに対抗できる駒がなく、自陣の黒マスには駒を配置できないという状況に陥ってしまっています。

13...Nf5 14.Ba3 Bd7 15.Rfd1 Rc8?!

Diagram after 15...Rc8?!

ルークをdファイルに回し、将来的にc2-c4と中央突破を狙う白に対し、黒は唯一の反撃のチャンスであるcファイルからカウンターを仕掛けようとしています。しかし、a8のルークはa7のポーンを守るという重要な任務に就いていたことを忘れてはいけません。cファイルからのカウンターを狙うなら、15...Qc7と指した方が良かったと思います。

16.Bb4! Nc4? 17.Rxa7

Diagram after 17.Rxa7

16.Bb4はa1のルークの道を開けながら、Nc4と指された時にナイトに当たらない位置にビショップを配置する一石二鳥の一手です。それに対し黒が指した16...Nc4はあまり良くない一手。手損したことを認めて、16...Ra8とルークを戻すのがベストムーブだったでしょう。白は17.Rxa7とポーンを取り、これもいい手だと思いますが、白にはもう一つ面白い変化が存在しました。

17.Bxf5! gxf5? 18.Qg3!!

Analysis diagram after 18.Qg3!!

18.Qg3は次にQg7とし、h8のルークを攻撃する狙いしか持たない一手ですが、驚くべきことに黒はこの手に対して有効な受けがありません!黒にはg7のマスを守る手が存在せず、黒マスビショップがf8のマスを押さえているためQg7に対してRf8と逃げることもできません。これでは負けてしまうので黒は17...exf5と取るしかありませんが。。。

17...exf5 18.Rxf5

Analysis diagram after 18.Rxf5

白はポーンを取り返し、力強いポジションを築いています。黒はa7のポーンも弱く、dファイルからも攻め込まれそうで、b4のビショップに対抗できる駒も存在しません。この局面は、白勝勢だと言っていいでしょう。それでは本譜に戻りましょう。

17...Nb2 18.Bxf5!

Diagram after 18.Bxf5!

白はd1のルークの当たりを無視し、ナイトを取って攻めを狙います。18...gxf5には先ほど言った19.Qg3という手があり、18...exf5には19.Rxd5とd5のポーンが落ちるので黒はルークを取りましたが。。。

18...Nxd1 19.Bxg6!! fxg6 20.Ng5!

Diagram after 20.Ng5!

19.Bxg6とビショップを捨てる手が白に勝ちを引き寄せる一手です!黒はこれを取りましたが、白は20.Ng5とf7の地点でのチェックメイトを狙っていますね。20...Rf8や20...Rh7とルークでf7の地点を守る手は白クイーンをf8に動かされてチェックメイトを食らってしまうので、黒はクイーンを動かしてキングに逃げ道を作ります。

20...Qb6 21.Qf7+ Kd8 22.Nxe6+!!

Diagram after 22.Nxe6+!!

更にナイトを捨てるこの手が、クイーンサイドへと亡命しようとしている黒キングの息の根を止める一手!22...Bxe6には23.Qe7#と一手メイトになるので22...Qxe6と取る一手ですが、それによってa5-d8の斜線が開きました。

22...Qxe6 23.Ba5+ Rc7 24.Ra8+ Bc8 25.Bxc7#

Diagram after 25.Bxc7#

白はキングサイドを食い破った後にクイーンサイドにも網をかけ、見事25手で黒キングを捕らえました。5...cxd4から進む変化では、黒は白の黒マスを使った攻撃を防ぐためにコンピューター並の手の正確さを必要としており、黒のプレーヤーにはそれを指し切る力がなかったと言えるでしょう。では、この試合から学べることを少しまとめてみましょう。

  • フレンチ・ディフェンスで3.Nc3 Bb4と進む変化をWinawerと呼ぶ。
  • Winawerでは、白はQg4からg7のポーンを狙いながらキングサイドでの攻めを作るのが一般的
  • 展開が遅れている時は、同じ駒を何度も動かさない
  • 相手に解消できない長期的な弱点(この試合では黒の黒マスの弱さ)がある場合は、急いで速攻を仕掛ける必要はない。

今回の解説は以上です。また次の記事でお会いしましょう!