実戦解説:クイーンサイドアタック

Rochan_to_Danke
FM Rochan_to_Danke
Oct 28, 2014, 5:13 PM |
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皆さんこんにちは!

自分は最近某チェスサイトで流れてくる試合をよく見ているのですが、その中で一つ、面白い試合があったので、それを紹介したいと思います。

この試合のテーマは「クイーンサイドアタック」。文字通りクイーンサイド(a-dファイル)を攻撃する戦法ですが、相手のキングはよくキングサイドにキャスリングすることが多く、何故相手のキングがいない側を攻めるのかという疑問を持つプレーヤーも多いと思います。ではこの試合を見ながら、クイーンサイドアタックの威力というのを見ていきましょう。

Anonymous(2003) VS Anonymous(2149)

1.d4 e6 2.c4 d5 3.Nf3 Nf6 4.Nc3 c6

Diagram after 4...c6

白はdとcのポーンで中央を押さえ、両サイドのナイトを展開しています。対して黒はdポーンで中央をコントロールし、e6とc6のポーンがそれをサポートしていますね。

5.Bg5 Be7 6.e3 0-0 7.c5!?

Diagram after 7.c5!?

黒はテンポよくビショップを展開し、キャスリングを済ませました。それに対して白は同じようにBe2から0-0とするのではなく、cポーンを5段目まで進めます。矢印のように、いくつものポーンが斜めに繋がっているものを「ポーンチェーン(ポーンの鎖)」と呼び、これは後々重要になってくるので是非覚えておいてください。

7...Nbd7 8.Be2 h6 9.Bh4 Re8 10. 0-0

Diagram after 10.0-0

白はBe2と展開し、キャスリングを済ませることによってキングの安全を確保しました。両サイドとも駒の展開を終え、キャスリングを済ませた時点でオープニングは終了。ここから中盤へと突入します。白は、クイーンサイドでのスペースを広げることに成功し、黒を押し込めようとしていますね。それに対し黒はRe8と指し、将来的にe6-e5と指す手を狙っています。この手が実現すれば、中央でスペースを手に入れることができ、c8のビショップの道を開くこともできます。

10...Nf8?!

Diagram after 10...Nf8?!

この手はやや不自然だと思います。黒はNf8-Ng6と指すことでh4のビショップを攻撃する狙いですが、白がBg3と避けた瞬間にe5の地点に対するプレッシャーが高まるため、黒がe6-e5と突きづらくなりますね。自分がここで考えていたのは、10...e5です。例えば11.dxe5 Ng4と進んだ局面を見てみましょう。

Analysis diagram after 11...Ng4

黒は一時的にポーンを捨てることになりますが、d4のポーンがいなくなったことによりc5のポーンが弱くなり、e5のポーンもいずれは落ちそうです。e6-e5突きが実現したことによりc8のビショップと、e8のルークが将来的に活躍できそうですね。では、本譜に戻りましょう。

11.b4 Ng6 12.Bg3 Nh5 13.a4

Diagram after 13.a4

白はクイーンサイドのポーンを進め、クイーンサイドアタックを開始します。それに対し黒はNh5としてg3のビショップを攻撃。白のe5の地点の支配を弱め、将来的なe6-e5突きを実現させる狙いでしょう。

13...Nxg3 14.hxg3 Bf6 15.Qc2 e5 16.b5 e4

黒はe6-e5突きを実行し、e5のポーンをe4まで突くことによって、こちらも矢印のようにポーンチェーンを作りました。ポーンチェーンが形成された際は、「矢印のように、ポーンチェーンが向っている側を攻める」というのがセオリーです。この局面だと白はクイーンサイドを、そして黒はキングサイドを攻めるということですね。何故そうなるのかということを、次の図を使って説明したいと思います。

上記の局面は、キング以外のピースを全て取り除き、ポーンのみを残した局面です。白も黒も、ポーンチェーンが向かっている側の方にスペースがあるのが分かるでしょうか。スペースが多くあるということは、それだけ兵力を配置する場所があるということ。逆に、スペースが少ない側にはあまり兵力を配置することはできません。なので、スペースがある場所に駒を配置し攻める、というのがポーンチェーンがある局面での基本的な考え方です。では、本譜を見ていきましょう。

17.Nbd2 Bg5 18.a5 Bd7

Diagram after 18...Bd7

この局面を見れば、どちらの攻撃が早いかは一目瞭然でしょう。白はg3のポーンがf4、h4といった要所を押さえ、g6のナイトを無力化することに成功しています。更にe2のビショップがh5のマスを押さえているため、h5-h4とhポーンを使った攻撃も防いでいますね。そして、g1のキングも、キングサイドの守りの要となるf2、g2のポーンを守る重要な役割を果たしています。このように、キングという守り駒がいるキングサイドは固く、攻めるのは意外と難しいことが分かるでしょうか。それに対して黒のクイーンサイドはb7のポーンがどの駒にも守られていないなど、非常に攻めやすい状況だと言えるでしょう。では引き続き本譜を見ていきましょう。

19.a6!!

Diagram after 19.a6!!

ポーンチェーンを攻める基本的な戦法は、根っことなるポーンを攻撃することです。b7のポーンを取ればc6のポーンが弱くなり、弱くなったc6のポーンを取ればd5のポーンが弱くなり。。。と、芋づる式にポーンが弱くなるのが分かると思います。19.bxc6は...bxc6と取り返されて、ポーンチェーンを維持されてしまいますね。

19...bxa6 20.bxc6 Bxc6 21.Rxa6 Qd7

Diagram after 21...Qd7

黒はクイーンを使って必死にクイーンサイドを防御しますが、クイーンサイドのスペースを持っているのは白です。ここから白は矢印のように兵力をクイーンサイドに寄せ、数の力でクイーンサイドからの突破を図ります。黒はキングサイドにスペースを持っていますが、ポーンチェーンの根っこであるf2のポーンは白キングによって固く守られており、攻め切るのは困難でしょう。

22.Rfa1 Reb8 23.Nb3 Qc7 24.Na5 Bb7

Diagram after 24...Bb7

白は予定通り、クイーンサイドに駒を集めます。クイーンサイドの守りの要である白マスビショップを消すことによって、d5のポーンにプレッシャーをかけたり、c5にあるパスポーンを進めやすくすることができますね。対して黒は、g6のナイトとg5のビショップが全く働いておらず、キングサイドへの攻撃も不発に終わりました。

25.Nxb7 Qxb7 26.c6 Qb2 27.Qxb2 Rxb2 28.c7

Diagram after 28.c7

黒はクイーンを交換することで白の攻めを緩和しようとしますが、時すでに遅し。a7のポーンとd5のポーンが落ちそうですし、Bg4からc7-c8とプロモーションを狙う手筋も存在します。

28...Ne7 29.Rxa7 Rc8 30.Bg4 f5 31.Bxf5!

Diagram after 31.Bxf5!

最後は白のタクティクスが決まり、勝負ありです。

31...Nxf5 32.Ra8 Nd6 33.Rxc8+ Nxc8 34.Ra8 1-0


c8のナイトが落ち、その後のプロモーションを防ぐことができない黒はここで投了。キングサイドへの攻めが難しいのに、ポーンチェーンを形成してクイーンサイドアタック対キングサイドアタックとなる状況を生み出した16...e4が直接的な敗因でしょう。黒は16...exd4として、中央からの突破を目指したほうが良かったと思います。では、この試合から学べることを少しまとめてみましょう。

  • いくつものポーンが斜めに繋がっているものを、ポーンチェーンと呼ぶ。
  • ポーンチェーンが形成された際は、ポーンチェーンが向かっている側に駒を集めて攻める。
  • ポーンチェーンの崩し方は、根っこのポーンを攻撃すること
  • キングサイドは、キングという守り駒があるため、クイーンサイドより少し守りが固くなる
  • クイーンサイドアタック対キングサイドアタックという状況を生み出す手を指す時は、クイーンサイドアタックを持つ側はキングをちゃんと守り切れるか、キングサイドアタックはキングサイドを崩す具体的なプランがあるか、などを考えてから実行する。

今回の実戦解説は以上です。また次の記事でお会いしましょう!