実戦解説:序盤のミスを咎める

Rochan_to_Danke
FM Rochan_to_Danke
Nov 5, 2014, 3:36 PM |
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皆さんこんにちは!

今回は、序盤のミスについて話していきたいと思います。自分のビデオレッスンでも触れましたが、序盤ですべきことは大きく分けて3つあります。

1)中央を支配する。

中央にいる駒は移動範囲が広く、両サイドに睨みを利かせることができます。中央を支配すれば強力なマスに駒をどんどん配置できるので、序盤では中央のマスを支配し、相手の駒をそこから遠ざけるというのが一般的な進め方です。

2)駒を展開する。

駒は、自陣でじっとしているだけでは活躍できません。ポーンを動かしてビショップの道を開いたり、ナイトを中央に近いマス(f3, f6, c3, c6)に動かすのがオーソドックスな展開の仕方です。駒を展開することでキャスリングができるようになるというのも、駒を展開するメリットの一つですね。

3)キャスリングをしてキングの安全を確保する。

中盤では、中央の支配権を巡る激しい攻防が行われます。キャスリングはキングを中央の戦火から逃れさせ、ルークを使いやすい位置に持ってくる非常に効率のいい一手です。

相手が「序盤ですべきこと」のどれかを無視した手を指してきた場合、それがミスである可能性があり、それを正確に咎めることができれば勝ちに一歩近づくことができます。今回の記事では某チェスサイトで1400~1800のプレーヤーが持ち時間10分以上で指した試合を使い、序盤のミスの咎め方を見ていきます。

Game 1: Anonymous(1631) VS Anonymous(1570)

1.c4 e5 2.Nc3 c6

Diagram after 2...c6

この試合は1.c4というイングリッシュ・オープニングで始まりました。白も黒も、矢印のようにしっかりと中央をコントロールしています。黒はまだ駒を展開していませんが、f8のビショップはいつでも戦線に出れる状態ですし、次にd7-d5と中央にポーンを二つ並べ、中央を完全に支配する手を準備していますね。

3.Nf3 d6 4.d4

Diagram after 4.d4

白は3.Nf3とポーンを攻撃し、黒は3...d6と白マスビショップの道を開けながらそれを守りました。白の4.d4は非常にいい手で、中央に直接プレッシャーをかけながら、c1のビショップの道も開いています。

4...exd4 5.Nxd4 Be7 6.e4 Nf6

Diagram after 6...Nf6

白はナイトを強力なd4のマスに据え、e4とc4のポーンが中央をがっちりと押さえています。対して黒もd6とc6のポーンが中央の要所を押さえ、やや狭いながらも5段目以降に白の駒を進めさせません。そして黒はキングサイドの駒の展開が終わったので、次にキャスリングをすることでキングの安全を確保することができますね。

7.Nf5?! 0-0 8.Nxe7 Qxe7

Diagram after 8...Qxe7

キャスリングを済ませた黒に対し、白は7.Nf5と飛び、8.Nxe7+とビショップを取りました。ビショップはナイトより使いやすい局面が多く、少し強い駒だと考えられているので白は少し駒得したことになりますが、このナイトはf3-d4-f5-e7と4回も動いています。このナイトを一度しか動いていないビショップと交換してしまったことで、白は手損してしまいました。白キングはまだ中央にいて、キャスリングをするまで手数がかかります。更に、e7にいるクイーンがe4のポーンとその先にいる白キングに目をつけていますね。このように、序盤で同じ駒を何度も動かすと他の駒の展開やキャスリングが遅れるということがあるので、十分気を付けましょう。

9.f3 Rd8 10.Be3?

Diagram after 10.Be3?

白は展開が遅れたことに気づき黒マスビショップを展開させましたが、これがミスでした。駒を展開する手ですが、e3のビショップに紐がついていませんし、キャスリングを準備する手でもありませんね。ここでは10.Be2と白マスビショップを展開し、次にキャスリングをしてキングを中央から遠ざける必要がありました。

10...b6?

白のお世辞にもいいとは言えないオープニングの進め方に対し、黒はそれを咎める手を見逃してしまいました。ここは、10...d5!と中央をこじ開けるのが好手です。

10...d5!

Analysis diagram after 10...d5!

自分がキャスリングを済ませていて、相手のキングがまだ中央にいる時は、常に中央をこじ開ける手がないかを確認しましょう。10...d5はe4のポーンにプレッシャーをかけ、dファイルを開いて白クイーンを攻撃する狙いも含んでいます。更にe3のビショップに紐がついていないので、白はexd5とeポーンを使ってd5のポーンを取ることができません。もし白が11.Qc2などとしてクイーンを避けつつe4のポーンを守ったのであれば、黒は11...d4!とフォークをかけることができますね。

11.Qc2? d4!

Analysis Diagram after 11...d4!

10...d5とされた後、e4のポーンを守るのは非常に難しく、白は苦しい戦いを強いられることになるでしょう。本譜では10...b6の後に白は11.Bd3とe4のポーンを守りながらキャスリングの準備をし、序盤のミスを咎められずに済みました。試合は黒のブランダーもあり、白は難なく勝利したようです。では、今回はもう一つ試合を用意したので、それを見ていきましょう。

Game 2: Anonymous(1789) VS Anonymous(1412)

1.d4 d5 2.g3 Nf6 3.Nf3 Bf5 4.Bg2 e6

Diagram after 4...e6

両者とも、非常にいいオープニングを指していますね。お互い中央のマスを押さえながら、駒の展開をして、キャスリングの準備もできています。

5.Ne5?! Nc6 6.a3?

Diagram after 6.a3?

白の5.Ne5という手は、明白なターゲットがないのに序盤に同じ駒を何度も動かす、非常に不自然な一手です。そしてe5のナイトにプレッシャーをかける5...Nc6に対して白が指したのは6.a3。この手は中央にまったく絡まないポーンを動かし、駒の展開をする/助ける手でもなく、キャスリングとは無関係な、序盤ですべきことを全て無視した一手です。白は矢印のようにNb4からc2のポーンを攻撃される手を怖がったのでしょうが、Nb4に対してはNa3とc2のポーンを守ることができます。簡単に守られるポーンを攻撃するためにナイトを何度も動かすようなことを、黒がする可能性は低いでしょう。

6...Nxe5! 7.dxe5 Ng4!

 

Diagram after 7...Ng4!

黒は、序盤ですべきことを全て無視した6.a3を見た瞬間に速攻を仕掛けます。g4のナイトはe5のポーンを攻撃するだけでなく、黒マスビショップと協力して死のマスであるf2の地点を狙っていますね。このように、キャスリングをしていないキングに対して死のマスを狙うのは、非常にオーソドックスな攻め方なので是非覚えておいてください。

8.f4 Bc5! 9.e3 d4?

Diagram after 9...d4?

ここまで完璧な指し方を見せた黒は、ここで致命的なミスを犯してしまいます。d4のポーンとe3のポーンを交換することで黒マスビショップの斜線を開こうとするアイデアですが、ここは9...Bxe3とポーンをただ取りする一手でした。

9...Bxe3

Analysis diagram after 9...Bxe3

白はポーンダウンだけでなく、キャスリングができない上にf2の地点からも攻め込まれそうです。10.Bxe3には10...Nxe3と取り返し、d1のクイーンとg2のビショップ、そしてc2のポーンにフォークがかかってしまいます。これは、黒勝勢でしょう。本譜では、9...d4?から黒は白にタクティクスを決められてしまいました。

10.e4!

Diagram after 10.e4!

e3のポーンを一つ進めるこの手で白は逆転することができます。f5のビショップを攻撃し、そのビショップが逃げたらg4のナイトが浮いてしまいますね。黒はd4のポーンが邪魔になり、c5のビショップの斜線を使った攻撃を決めることができません。この手で息を吹き返した白は、わずか22手で黒を破りました。では、今回の記事で出てきた試合から学べることを少しまとめてみましょう。

  • 序盤ですべきことは中央を支配することと、駒を展開すること、そしてキャスリングをすること。
  • これらのことを無視した手はミスである可能性が高い
  • 序盤で同じ駒を何度も動かすと、他の駒の展開やキャスリングが遅れてしまう。
  • 自分がキャスリングをしていて、相手のキングがまだ中央にいる場合は、中央をこじ開ける手を模索する。
  • キャスリングをしていないキングに対する攻め方の一つは、死のマス(f2、f7)を攻めること。

今回の解説は以上です。また次の記事でお会いしましょう!