実戦解説:裸の王様

Rochan_to_Danke
FM Rochan_to_Danke
Nov 7, 2014, 3:00 PM |
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皆さんこんにちは!

今回は某チェスサイトでシシリアン・ディフェンスに対する変化の一つである、ウィング・ギャンビットの試合で面白いものを見つけたので、それを解説していきたいと思います。持ち時間は、10分と1手につき15秒加算。

Anonymous (2127) VS Anonymous (2136)

1.e4 c5 2.b4!?

Diagram after 2.b4!?

この2.b4と左翼にあるポーンを捨てる一手がウィング・ギャンビットの特徴です。白はポーンを捨てる代わりに黒のc5のポーンをd4を睨んでいる場所からそらし、ポーンの代償を中央の支配権で得ようということですね。

2...cxb4 3.a3 bxa3 4.Nxa3

Diagram after 4.Nxa3

白は、キングズ・ギャンビットやクイーンズ・ギャンビットでよく見られるギャンビットしたポーンを取りにいく作戦ではなく、3.a3とポーンの交換を持ちかけました。黒は3...bxa3で完全にポーンアップとなりましたが、白は将来的に開いたaファイルやbファイルから攻撃を仕掛けることができます。更に黒は、c7にいたポーン以外どの駒も動いていないので、駒の展開をするのも難しそうですね。

4...d5?! 5.exd5 Qxd5

Diagram after 5...Qxd5

黒の4...d5はオープニングですべきことを考えると非常に不自然な一手です。矢印が示すように、5...Qxd5の後にQe5+とできればキングとルークをフォークできますが、もし白がそれを許さなかった場合、黒は駒の展開をせずにクイーンだけを前線に出していることになりますね。前線にいるクイーンは相手が駒を展開する手で攻撃されやすくなるというデメリットがあり、攻撃されたクイーンを逃がす、すなわち序盤で同じ駒を何度も動かすことになるのが分かると思います。

6.Bb2 Nc6 7.Nb5!

Diagram after 7.Nb5!

白もナイトを二度動かしましたが、このナイトはa7のポーンにプレッシャーをかけながら、c7の地点でのフォークを狙うという明白なターゲットがあります。更にa7のポーンがa1のルークによってピンされているので、黒はa7-a6からb5のナイトを取りにくいですね。c7の地点を守るためには、黒はキングを動かしてキャスリングの権利を放棄するか、クイーンを動かすしかありません。キャスリングの権利は非常に重要なので黒はクイーンを動かしたのですが、これで更に展開が遅れてしまいました。

7...Qe4+ 8.Qe2!?

Diagram after 8.Qe2!?

クイーン交換が行われた後に黒はc7の地点を守るため、キングを動かしてキャスリングの権利を放棄することになるので8.Qe2は良い一手だと思います。しかし、黒は駒の展開が殆どできておらず、中央にキングが取り残されていますね。このことから、自分ならクイーンを交換して攻め駒が少なくなる8.Qe2より、8.Be2を選んでいたと思います。g2のポーンが浮いてしまいますが、黒はこれを取ることはできません。

8.Be2!? Qxg2? 9.Bf3!

Analysis diagram after 9.Bf3!

一見h1のルークが落ちてしまうように見えますが、9.Bf3が用意の一手。クイーンを攻撃しながら、h1のルークを守っています。黒はクイーンを逃がすしかなく、次にNc7+を決められてしまい、ゲームオーバーです。黒は8...Qxg2ではなく8...Qf4としてc7の地点を守ることができますが。。。

8...Qf4 9.Nf3

Analysis diagram after 9.Nf3

駒の展開が終わり、キャスリングの準備が整った白に対し、黒は駒の展開で大きな差をつけられていますね。白はポーンダウンですが、ポーンの代償は十分過ぎるほどに得られたと言っていいでしょう。白は将来的にNe5としてf4のクイーンの斜線を塞いでからNc7+を狙う手筋などもあり、黒がこれを持ちこたえるのは至難の業です。では、本譜に戻りましょう。

8...Qxe2+ 9.Bxe2 Kd8 10.Nf3

Diagram after 10.Nf3

黒はクイーンサイドのフォークを防ぎましたが、白はもう一つのナイトがキングサイドでのフォークを狙っています。クイーンがいなくなったものの、白の攻めは止まりそうにありません。

10...f6 11.0-0 a6 12.d4

Diagram after 12.d4

黒は11...a6とb5のナイトを攻撃しましたが、このポーンはピンされているのでナイトを取ることはできませんね。それを見越した白は、12.d4から中央を食い破る作戦を選びます。駒の展開ができていない黒のキングは味方のサポートがなく、丸裸も同然。序盤ですべきことを無視したことが仇となりました。

12...e6 13.Rfd1! Rb8 14.d5!

Diagram after 14.d5!

黒は13...Rb8とピンを外しb5のナイトを取れるようにしましたが、白はそれを無視して攻めを続けます。14.d5はdファイルをこじ開け、黒キングへと迫る強力な一手です。

14...exd5 15.Rxd5+

Diagram after 15.Rxd5+

黒はb5のナイトを諦め、d5のポーンを取りました。14...axb5に対しては、白は更に強力な攻めがあります。

14...axb5 15.dxc6+ Kc7 16.cxb7 Rxb7 17.Nd4!

Analysis diagram after 17.Nd4!

17.Nd4で、黒の守りは完全に崩壊します。このナイトはb5のポーンを攻撃するだけでなく、f3のマスを開けることで将来的にBf3からb7のルークを攻撃することができますね。例えば17...Bd7と黒がb5のポーンを守ってきたら。。。

17...Bd7 18.Bf3 Rb8 19.Ra7+

Analysis diagram after 19.Ra7+

縦横斜め、全方向から攻撃されている黒にもう守る術はありません。19...Kc8に対しては20.Bc6辺りで黒は投了するしかないでしょう。では、本譜に戻りましょう。

15...Ke8 16.Nc7+ Kf7 17.Bc4!

 

Diagram after 17.Bc4!

必死で逃げる黒キングに対し、白は追撃の手を緩めません。17.Bc4は矢印が示すように、d5のルークを動かすディスカバードチェックを狙っています。

17...Kg6 18.Bc1!!

Diagram after 18.Bc1!!

ビショップを初期位置に戻すこの一手は、黒キングの逃げ場を奪う素晴らしい一手。Greg Shahade対羽生さんの試合解説でも言いましたが、状況に応じて斜線を切り替えるのが、ビショップをうまく使うコツです。f6のポーンによって斜線を止められていたビショップは、初期位置に戻ることで攻めに参加していますね。

18...Nge7

Diagram after 18...Nge7. White to move and mate in 2

黒はようやくナイトを展開させましたが、時すでに遅し。白はここから2手でチェックメイトすることができます。この記事を読んでいる皆さんは分かりましたか?

19.Nh4+! Kf7 20.Rd7!!#

Diagram after 20.Rd7!!#

c8のビショップの斜線を塞ぎ、e7のナイトをピンするディスカバードチェックメイト!二つのナイトがしっかりと黒キングの逃げ場所を押さえていますね。どこかの本で出てきそうな、素晴らしい終局図だと思います。2136という比較的高いレーティングを持っていた黒も、序盤ですべきことを無視してしまったために、わずか20手でチェックメイトされてしまいました。では、この試合から学べることを少しまとめてみましょう。

  • ウィング・ギャンビットはポーンを捨てる代わりに駒の展開でのリードと中央の支配権を得る変化。
  • 序盤ですべきことを無視してはいけない。
  • 前線にいるクイーンは、相手が駒を展開する手で攻撃されやすく、何度も動かす羽目になる。
  • 展開ができておらず、キャスリングをしていないキングに対しては、クイーンがなくても攻めが成立する。
  • 状況に応じて斜線を切り替えるのが、ビショップをうまく使うコツ。

今回の解説は以上です。また次の記事でお会いしましょう!