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実戦解説:IM Greg Shahade vs 羽生善治

Rochan_to_Danke
Nov 3, 2014, 5:39 PM 4

皆さんこんにちは!

自分のツイートを見た方は既に知っていると思いますが、数日前に来日したIM Greg Shahadeが、羽生さんとのブリッツの試合のyoutube動画を公開しました。なので、今回の記事ではその試合の簡単な解説をしていきたいと思います。

https://www.youtube.com/watch?v=QUomyItgWG4

自分がこの試合を見て感じたのは、両者の手の正確さです。ブリッツは持ち時間が短いため、ミスが出やすい試合であることが多いのですが、Gregも羽生さんも、時間切迫になるまでミスというミスがなく、非常に高いレベルの棋譜を残したと思います。では、試合を見ていきましょう。

IM Greg Shahade VS FM Yoshiharu Habu

1.e4 e6 2.d4 d5

Diagram after 2...d5

このオープニングは、フレンチ・ディフェンス。非常に手堅いオープニングとして知られています。黒はe6にポーンを進めたため、c8のビショップを展開しにくくなりますが、その分d5のポーンへのサポートが増していますね。白はここで1)exd5とポーンを取る 2)e4-e5とポーンを進める 3)Nc3やNd2としてe4のポーンを守る、と3通りの指し方があり、Gregは3番目の指し方を選びました。

3.Nd2 c5 4.exd5 Qxd5 5.Nf3 cxd4

Diagram after 5...cxd4

白の5.Nf3という手は、ポーンを捨てる一手です。確かに白はポーンダウンですが、次にBc4として黒のクイーンを攻撃しながらキャスリングの準備をしたり、Nb3からd4のポーンを攻撃することができます。とはいえ、白もd4のポーンを取るには少し時間がかかるので、黒もその間に展開を済ませることができれば、局面はほぼ互角と言えるでしょう。

6.Bc4 Qd6 7.0-0 Nf6 8.Nb3 Nc6

 

Diagram after 8...Nc6

白はキャスリングを済ませ、8.Nb3とすることでd4のポーンを攻撃します。対する黒はd4のポーンを諦め、展開の遅れを取り戻そうとしていますね。ここまでは全て定跡通りに進んでいますが、10手目に白は面白い手を指しました。

9.Nbxd4 Nxd4 10.Qxd4!?

Diagram after 10.Qxd4!?

白で最もポピュラーな手は10.Qxd4ではなく、10.Nxd4とナイトを中央に配置し、クイーンを残す指し方です。既にキャスリングを済ませてキングの安全を確保した白が、まだキャスリングをしていない黒に対してクイーンの交換を持ちかけるのはあまり面白くないということでしょう。しかし、Gregは動画で「この変化はあまり指したことがない」と言っています。この変化を相当研究しているであろう羽生さんに対し、クイーンを交換することで単純化を図るのはいい判断だったと自分は思います。

10...Qxd4 11.Nxd4 Bd7 12.Be2!?

Diagram after 12.Be2!?

白は11...Bd7を見た瞬間に、白マスビショップの斜線を切り替えます。白マスビショップをe6のポーンに止められているa2-g8の斜線より、b7のポーンにプレッシャーをかけるh1-a8の斜線に配置した方が働きがいいのは一目瞭然でしょう。このように、状況に応じて斜線を切り替えるのが、ビショップをうまく使うコツです。

12...Bc5 13.Nb3 Bb6 14.Bf3 Bc6!?

Diagram after 14...Bc6!?

羽生さんは少し時間を使い、14...Bc6と指しました。白に15.Bxc6+とされた後、c6にどのポーンにも守られることがない孤立ポーンという弱いポーンができてしまう手ですが、白はこのポーンを攻撃することは難しいと判断した上での決断でしょう。c6のポーンを攻撃できるナイトの位置であるa5、d4の地点は黒マスビショップがしっかり押さえていますね。孤立ポーンができてしまうという理由で14...Bc6を切り捨てず、局面を見て冷静にこの手を指せたのは、さすが羽生さんと言ったところでしょう。

15.Bxc6 bxc6 16.Bf4 0-0 17.Rfd1

Diagram after 17.Rfd1

対するGregも、エンドゲームの基礎をしっかりと理解した手を指しています。a1にいるルークではなく、f1のルークをd1に回したのは矢印のようにキングを中央に持っていくため。ルークエンディングの記事でも扱いましたが、クイーンのない局面ではチェックメイトされるリスクが低いため、キングをアクティブに使っていくのが重要です。

17...Rfd8 18.Kf1 Nd5 19.Bd2 

Diagram after 19.Bd2

黒もルークをdファイルに回し、dファイルの支配権を狙います。そして18...Nd5とビショップを攻撃した手に対し、白は19.Bd2とビショップを引きました。一見d1のルークの道を塞いでいるように見えますが、矢印のように両サイドの斜線をコントロールし、黒のNb4からのカウンターを防いでいます。

19...f6 20.Ke2 Kf7 21.g3 Ne7

Diagram after 21...Ne7

黒はキングを中央に向かわせた後、21.g3を見てナイトをe7に引きました。d5という中央のマスにいたナイトを引き、状況を見てf5に飛び出せる位置に戻した羽生さんの指し方は、非常に柔軟なものだと思います。

22.Bb4 Rxd1?! 23.Rxd1 Nd5

Diagram after 23...Nd5

ここで、羽生さんから小さなミスが出ます。22...Rxd1としてしまったせいで、白にdファイルという攻めの足掛かりを与えてしまいました。d5のナイトは一見dファイルに蓋をしているように見えますが、ビショップが逃げた後にc2-c4とされてしまうと、dファイルがこじ開けられてしまいます。22...Nd5と戻っていたなら、局面はほぼ互角だったでしょう。

24.Bc5 Rb8 25.Bxb6?!

Diagram after 25.Bxb6?!

ここまで完璧な指しまわしを見せたGregも、ここで少しミスをしてしまいます。ビショップを交換してしまうと、白の攻め駒が減ってしまうため、dファイルからの攻撃がそこまで強力なものではなくなってしまいました。ここは、25.c4!とするのが正確な一手。例えば25.c4 Ne7 26.Ba3!?と進むと。。。

25.c4 Ne7 26.Ba3!?

Analysis diagram after 26.Ba3!?

自分の第一感は26.Bd6とルークを攻撃する手でしたが、dファイルを自分から閉じるのは面白くないと思っていたところでこの手を思い付きました。Rd7とe7のナイトを攻撃する手が強力なので、黒はそれを防ぐ一手ですが、白にはその後にRd2とb2のポーンを一旦守り、Nc5とする手筋が存在します。例えば。。。

26...Rb7 27.Rd2! e5 28.Nc5 Bxc5 29.Bxc5

Analysis diagram after 29.Bxc5

c5のビショップが黒マスを完全に支配しているのが分かるでしょうか。更に白はクイーンサイドでポーンを多く持っているため、将来的にパスポーンを作ることができます。a7とc6の弱い孤立ポーンというターゲットがある白が指しやすいのは一目瞭然でしょう。では、本譜を見てみましょう。

25...axb6 26.c4 Ne7 27.Rd7 c5

Diagram after 27...c5

白はルークを7段目に侵入させましたが、そのルークには味方のサポートも、明白なターゲットもありません。c5とb6のポーンがb3のナイトを押さえ、援護射撃を防いでいるのもポイントです。

28.a3 Kd8 29.Rd6 e5 30.g4 Nc8

Diagram after 30...Nc8

28.a3と黒の将来的なaファイルからのカウンターを防ぎ、30.g4とf5の地点を押さえた白に対し、黒は8段目を使ってナイトの活用を図ります。d6のルークが逃げた後にKe7とし、Nd6からc4のポーンを攻撃できれば黒が指しやすくなるでしょう。ただ、この時点でGregの持ち時間50秒に対し、羽生さんは15秒ほど。一手毎に2秒増えますが、それでも考える時間はほとんどありません。しかし、羽生さんはここから怒涛の反撃を見せます。

31.Rd1 Ke7 32.Na1 Nd6 33.b3 b5!!

Diagram after 33...b5!!

時間がなくても羽生さんの指し手は正確無比。33...b5は、クイーンサイドから反撃を狙う力強い一手です。白はNc2-Ne3-Nd5+とナイトを攻撃的な位置に持っていきたいのですが、それには時間がかかりすぎます。今までb6のポーンを守るだけだったb8のルークが、この手で息を吹き返しました!

34.cxb5 Nxb5!

Diagram after 34...Nxb5

このポーンをナイトで取るのも正確な一手。a3のポーンを攻撃しながら、Nc3+とフォークをかける手や、d4の拠点にナイトを据える狙いも含んでいます。

35.Ke3 Nxa3 36.Rc1 Kd6 37.Rd1+ Ke6 38.Rc1 Kd6 39.Rd1+

Diagram after 39.Rd1+

ポーンダウンの白は、ルークを行ったり来たりさせ、三回同一局面でのドローを狙います。持ち時間の少ない羽生さんもキングを行ったり来たりさせ、ドローになるかと思われましたが。。。

39...Kc6!

Diagram after 39...Kc6!

日本ランクトップのプレーヤーは、IMの暗黙のドローオファーを蹴り、勝ちを目指します!

40.Rc1 Nb5? 41.b4!

Diagram after 41.b4!

GregもさすがIMといったところ。羽生さんのミスを誘い、cファイルのピンを生かしてそれを咎めます。

41...Nd6 42.Rxc5+ Kd7 43.Nc2 Ra8 44.Ra5?

Diagram after 44.Ra5?

ポーンを取り返して気が緩んでしまったのか、白からミスが出ました。一見aファイルを押さえ、盤の端にパスポーンを作ろうとする自然な一手なのですが。。。

1-0

羽生さんは44...Rxa5を取ろうとしたところで時間が落ちてしまいました。正解は44...Nc4+!とキングとルークをフォークする一手。後一歩のところだった羽生さんも、試合が終わった瞬間にGregと笑顔で局面について話しあっていました。試合中の真剣な表情と、終局後の笑顔のギャップがすごいですね(笑)。

ブリッツといえど、この試合のクオリティーは非常に高いものでした。王座戦を終えたばかりなのに、FIDEレート2476を誇るIMに対して黒で一歩も引かず、後少しで勝つことができた羽生さんには拍手を。Gregも、来日して日本のプレーヤーにIMと指す機会を与えてくれたことには感謝したいと思います。

では、今回の解説は以上です。また次の記事でお会いしましょう!

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