Double Rook Ending

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2018/03/31 5:15 |
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OTBのゲームで、どのようにプランを立てるかとても悩んだゲームがあったので紹介します。黒が私。

 

1. e4 e5 2. Nf3 Nc6 3. Bc4 Nf6

私はItalian Game(3. Bc4)に対しては3... Nf6を指すことにしています。Evans Gambitを避けたいという思いもあります。

私は1. e4 e5の黒番を持つ時には、「どこかでd5を指す」というプランを念頭に置いて指しています。シンプルですが指し手に悩んだ時には比較的効果的なプランだと思っています。

(ちなみに、1. d4の黒番を持つ時には、「どこかでc5を指す」というプランを念頭に置いています。)

4. d3 Be7 5. O-O O-O

この日はなるべく序盤から時間を使おうと意識していました。5手目から時間を小刻みに使いました。

6. Re1 d6

6... d6も何気ない手ですが、この手の背後にはいくつかのプランがあります。

Diagram after 6... d6

1) 7... Bg4, 8... Nd4とするプラン。キングサイドの形を崩します。

2) 7... Na5から白マスビショップとナイトを交換するプラン。ダブルビショップの優位性を主張します。

7. a3 a6!?

7. a3はNa5にBa2というように対応する手だと思います。それに対して7... a6!?はやや悩んだ手で、b5マスを白に使われないようにする、将来的にb5 pushからクイーンサイドを伸ばしていくことを狙っています。ニムゾヴィッチ流に言えば「予防手」です。

端ポーンは将棋の端歩と似た部分もありますが異なる部分もあり、「b4/b5/g4/g5を相手に使われないようにするための端ポーン」という手もあります。Najdorfの5... a6等ですね。

黒7手目はほかの手も十分考えられるところだと思いました。こういうところに性格が出ますね。

なお、Modern Chess Opening 15th Editionに載っている定跡は7. a3 Kh8! 8. Nbd2 Ng8 9.Nf1 f5でイコライズ成功、というものです。

 

8. Nbd2 Bg4 9. c3

8... Bg4はナイトをピンする手で、6手目のプラン1)に対応します。それに対して9. c3はNd4を防ぎ、かつセンターを手厚くする手です。

ここにきて6手目の黒のプランがどちらも成立しなくなっていることに気づくと思います。黒は新しいプランを考えるか、今までのプランに固執するかを決めないといけません。

9... Qd7 10. Nf1

10. Nf1はRuy Lopezの白番でもよく出現する手で、ナイトの組み換えを狙っています。次に11. Ne3から12. Nf5を許すと黒は相当苦しいポジションになります。Nf5まで指せなくても、11. Ne3は白極めて良い形です。

 

将棋においては「相手の最善形の1手前は仕掛け時」という言葉があります。それを思い出し、黒からここで仕掛けることにしました。結果的にタクティクスが決まる形だったのは幸運でした。

Diagram after 10. Nf1

10... d5

この手が戦術的に成立することを、10分弱かけて読みました。

まず、ナイトがピンされているためにe5ポーンは落ちません。

加えて、11. exd5 Nxd5 12. Bxd5 Qxd5 13. Ne3に対して13... Bxf3!という返し技が成立し、以下14. Nxd5 Bxd1 15. Nxe7+ Nxe7 16. Rxd1 Rad8という手順で黒やや指しやすいだろうと読みました。14. Qxf3等途中の分岐もありますが、黒がすぐに駒損する変化はないことを読み、10... d5を指しました。

 

11. exd5 Nxd5 12. Bxd5 Qxd5 13. Ne3 Bxf3! 14. Nxd5 Bxd1 15. Nxe7+ Nxe7 16. Rxd1 Rad8

Diagram after 16... Rad8

10手目の読みの通り進みました。

さて、10手目の読みの際に、黒16手目の局面で黒が指しやすいと対局中考えていた根拠は以下です。

  • 白d3のポーンがほぼバックワードポーンであり、黒ルークのアタックを受けやすい。
  • 白クイーンサイドのポーンが黒マスにいるため、白の残ったマイナーピースである黒マスビショップと相性が悪い。

ただし、タクティクスが決まって心理的に黒が指しやすいと思っているだけで、客観的に見ればイコール程度だと思っていました。

17. Be3 Nd5!? 18. c4 Nxe3 19. fxe3

ナイトとビショップを交換し、ルークが2つずつのエンドゲーム、いわゆるDouble Rook Endingに入ります。Double Rook Endingについて理論的に勉強したことがなかったので、ここからはひたすら読みの力とプランニングの力で勝負するしかないと思っていました。

Diagram After 19. fxe3

 

19... Rd7?!

指した瞬間に、少し嫌な感触がしました。dファイルにルークを重ねてバックワードdポーンを狙うのはプランとして問題なかったと思っていますが、白からdポーンの弱点を解消する手立てがあります。

20. d4!とされると、白の弱かったdポーンが、一転してパスポーン候補になります。21. dxe5とできるわけではないので黒からは放置して問題ないですが、それでも黒は攻撃目標を失います。

20. Rd2 Rfd8 21. Rad1

黒は20手目の後で、2つの手を指したい局面です。20... c5 と20...  f5がそれで、それぞれどのようなプランに基づく手かというと、

1) 20... c5は白からのd4 breakを困難にすることによって、白dポーンを攻撃目標として固定します。

2) 20... f5は白からのe4 pushを困難にすることによって、白にe4と指された後黒のfポーンが弱点になることを防ぎます。

ちなみに「エンドゲームでは同じファイルに相手のポーンがいないポーンを突く(この場合、黒のfポーン)」というのがひとつの原則です。けっこう有用です。

ただ、ポーンの手を指す前に、ひとまず20... Rfd8として白に強制手(21. Rad1)を指させます。

21... c5

この手も相当悩みました。c5とf5のどちらを先に突くかを考えていました。結果として、c5は攻撃の手でf5は防御の手なので、攻撃の手を先に指そうと思ってc5を指しました。

22. b4! b6

これは黒からcxb4と取れない(cファイルに白のパスポーンができる形になって守りづらい)ので、bxc5が白の権利になります。「いつでも可能な手段はすぐに実行せずに残しておく」というのはあらゆるボードゲームにおいて(そして、もしかしたら人生にも)役に立つ考え方です。

23. Kf2 f5 24. Ke2

c5とf5を両方指せて、黒は満足。黒の狙いとしてはe4 pushですが、すぐに指すと 24... e4 25. dxe4 Rxd2+ 26. Rxd2 Rxd2+ 27. Kxd2 cxb4 28. axb4 fxe4 +-のようになり一気に黒が負けます。

24... Kf7

黒としては、白にbxc5を指させる方が好都合です。クイーンサイドの形が決まるので、パスポーンをクイーンサイドに作られる心配がなくなるからです。

25. bxc5 bxc5 26. Rb1

白も権利になっていた25. bxc5を指し、黒クイーンサイドに弱点を作ります。黒はここでいい加減に指すと築き上げてきた優位をいっぺんに失います。

Diagram After 26. Rb1

26... e4!

読み切っていたわけではないですが、「勝ちに行くならこの手しかない」と直感で思った手。27. exf4??ができないため、24手目注釈の手順で負けることはありません。

27. d4 cxd4 28. exd4 Rxd4 29. Rxd4 Rxd4

白の弱点であったdポーンを取り、黒がポーンアップになりました。10手目に時間をかけて読みを入れていた時に考えていた、「d3のポーンが弱点になる」ということから、dファイルに圧力をかけるというプランを選択し、具体的な駒得につなげる、ということが今回たまたまうまくいきました。

30. Rb7+ Ke6

30... Ke6は決め手の気分で指しました。正確には別に決め手ではないです。

ただ、Kg6やKf6ではなくKe6の狙いとしては、黒のg, hポーンを取られてもaポーンを守り、白のc, aポーンを取れば黒良しという狙いでした。ただ、白にもパスポーンができるため、ちょっとその形勢判断は怪しいです。

31. Rb6+ Rd6 32. c5 Rxb6 33. cxb6

一瞬負けたかと思いましたが、キングがポーンに追いつけます。

33... Kd7 34. a4 a5 0-1

最後の手はbポーンをプロテクテッドパスポーンにさせない手です。7. a3 a6と指して本格的な戦いが始まり、最後は34. a4 a5と指してゲームが終わるのはなかなかおしゃれでした。