手の読み方について

手の読み方について

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手を読む、というのはどういうことでしょうか。

Kotovが名著Think Like a grandmaster(日本語訳もあります)で書いているように、候補手を挙げて、その手について「ツリー」を作成し、そしてそのツリーが行き着く先の局面を評価する、という方法が手を読む方法として挙げられています。

それでは、実際に、時間制限のある実戦でそれを行うとどうなるでしょうか。

OTBのゲームを題材に、対局中の思考を思い出しながら、思考の過程を追っていきたいと思います。

白が私です。

1.e4 c5 2.Nf3 e6 3.g3

Michael Adamsがオリンピアードで指し、白がかなり良くなった形を実戦で投入してみることにします。2... e6に対してオープンシシリアンにするのは、Taimanov, Kanなどかなり独特な感覚が必要な定跡が多いので、それを外す意味もあります。本局、序盤はあっさりいきます。

3...Nf6 4.d3 d6 5.Bg2 Be7 6.O-O Nc6 7.Qe2 O-O 8.c3 Rb8 9.Nbd2 b5 10.d4 Qb6 11.Nb3

c4を突かせてd2に戻り、センターを確保する狙いです。

11... a5 12.dxc5 dxc5 13.Bf4 Ra8 14.Rad1 a4 15.Nc1 Ba6

黒はクイーンサイドから攻める志向がはっきりしてきます。

16.Rfe1 b4 17.c4 Rad8 18.Qc2 Na5 19.e5 Nh5 20.Bg5 b3 21.axb3 axb3 22.Qe4 Bxg5 23.Nxg5 g6
24.Qh4 Bxc4

White to move

さて、この局面から行きましょう。白は1ポーンダウンですが、戦いに行くことはできます。ちなみにこの時点で残り時間は16分で、1手につき15秒増えるタイムコントロールでした。

白にどんな手が見えますか?

まず見えるのは25. g4です。ナイトが動けばQxh7#なので、黒は何かひねり出さないといけません。

そこで25... h6なら26. gxh5 hxg5 27. Qxg5として、少なくともポーンは取り返せそうです。これなら大丈夫。

他には? 25. Rxd8?は25... Qxd8!で白がひどいです。白ナイトが動けば...Qxh4からポーン形が悪すぎます。

では、ツリーを書きましょう。

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対局中に読んでいたのはこの2手でした。しかしコンピュータは25. Ne4!を推奨します。このように、候補手を挙げるというのはプレーヤーのスキルに左右されるところです。

25.g4 f6

読んでいない手が来ました。こういう時には落ち着いて、もう一度読み直します。

ちなみに25... Rxd1! Rxd1 Rd8!というディフェンスをコンピュータは推奨します。これは見えないです。

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読んだ結果がこれ。26. gxh5と26. Nxh7のどちらも大丈夫そう、という結論です。そういう場合はどうするか、というと直感に従います。私の直感は26. Nxh7を推奨していたので、そちらを指します。

26.Nxh7 Kxh7 27.gxh5 g5

読み筋通りに進みました。ここでも手を考えます。28. Qg4, 28. Be4+を考えましたが、コンピュータの推奨手である28. Qg3は対局中は考えませんでした。候補手が見えていないなあ、というところですが、それは実力なのでしょうがないです。

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28.Qg4 Kh6

読んでいない手が来ました。ここでは、29. h4を読みましたが、30. hxg5 fxg5となるとあまり白も面白くありません。そのため、...fxg5を不可能にするため、

29.exf6 Rxf6

と先に入れておきます。

30.h4 Rg8 31.Rd7 Qb4

少し端折ってこの局面。白の候補手、そして最も明快に勝てる手は?

White to Move

32.Re5!!

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35手目まで読んで、この手を決行しました。驚くべきことに、結果的に32. Re5!!で黒はなんとメイト受けなしになっています。

32... Rf5 33.Rxf5 Qe1+ 34.Kh2 exf5 35.Qxf5 Rg7 36.hxg5+ Kxh5 37.Bf3+
Kh4 38.Qg4#

本来は候補手はもっと幅広く読むべきですし、より深く読むことができる場面ではより深く読むのが適切です。また、局面評価も重要であり、たどり着いた局面がどちらが良いのかを評価できることも重要です。