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グリークギフト-Part1

skramchi
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 今回は中級者テクニック(だと思う)の1つ、グリークギフトについて解説します。

 え? 「Queens vs. Rook」を投稿するんじゃなかったのかって? きっと気のせいです。

 少しLive Rapid(15|10)が上手く行かないので間をおいて記事でも書こうかという魂胆です。笑

 

 ※注意※

 この記事はグリークギフトの概念を、極端に単純化した例を参考に解説するもので、具体的な手順を提供するものではありません。手順を暗記するだけでは実戦で使い物になることはまずないでしょう。

 

 早速ですが実戦で下図のような局面に遭遇しました。

1.d4 d5 2.c4 Nf6?!
 この形はマーシャル・ディフェンス(Marshall Defense)と呼ばれ、黒としてはあまり良くないとされています。理由は3.cxd5に対して、
3...Nxd5 4.e4
3...Qxd5 4.Nc3
 と、このようにいずれも手損を強いられるからです。
4...Nf6 5.Nc3 e6 6.Nf3 Bb4 7.Bd3 O-O 8.e5 Nd5
 その後黒は順当に展開しているように見えます。黒マスビショップが絶対ピンをかけた上で、c3マスに2重の圧力をかけています。
 しかし。
9.Bxh7+!
 痛烈なビショップサクリファイス。グリークギフト(Greek Gift)とは、白ならBxh7+。黒ならBxh2+とするサクリファイスのことを言います。なぜこのようなサクリファイスが通用するのか、続きを見てみましょう。
9...Kxh7 10.Ng5+ Kg8 11.Qh5 Re8 12.Qxf7+ Kh8 13.Qh5+ Kg8 14.Qh7+ Kf8 15.Qh8+ Ke7 16.Qxg7#
 黒のキングがチェックメイトされました。
 このようなゲームはおよそレート1500程度のプレイヤー同士でしばしば発生するような気がします。(私の体感で恐縮ですが。)
 似た局面は全く別のオープニングからでも起こりえます。
 やはり黒のキングがチェックメイトされました。
 しかしBxh7+後、メイトまで数手かかりますし、色々な変化手順がありそうですね。少々複雑なので、詳しく見てみるために重要な要素だけを抜き出してしまいましょう。
 随分とすっきりしました。順を追って詳しく見てみましょう。
1.Bxh7+ Kxh7
 もしこの手の後、黒の防御が成功すればサクリファイスは最初から失敗していたことになります。逆に防御できないことが分かれば、ここでの黒の最善手は1...Kh8ということになりますね。
2.Ng5+ Kg8 3.Qh5 Re8
 3...Re8 は強制手です。4.Qh7#のメイトを避けるためにはf8マスをキングが逃げるために開けなくてはなりません。
 一応3...Qxg5でもメイトは避けられますが、余程白がこの攻撃の前に駒損していなければピースダウンが避けられません。最初のゲームを例にとっても、11...Qxg5 12.Bxg5 Nxc3 13.a3 Ba5 14.Bd2 Nd5 15.Bxa5(単純な加算で白が+4点)。
4.Qxf7+ Kh8 5.Qh5+ Kg8 6.Qh7+ Kf8 7.Qh8+ Ke7 8.Qxg7#
 結局この後は全て強制手でメイトされてしまいました。つまり3...Re8の時点で黒に受けが無いことになりますね。
 ではその前の手を2...Kg8ではなく、2...Kg6に変えてみましょう。
2...Kg6 3.Qg4
 4.Ne6+ 続いて5.Qxg7#とするメイトもしくはクイーン取りの強烈な狙い。
 (場合によっては3.Qd3+)
3...f5 4.Qg3 f4 5.Bxf4 5...Rxf4 6.Ne6+ Kf7 7.Nxd8
 どうやら2...Kg6でも厳しいようです。
 この場合、ナイトによるh7マスの支配によってキングが一切の後退を封じられます。よって白の苛烈な攻撃が続くことになります。しかし局面次第では黒の防御が成功する場合もあるでしょう。
 今回はグリークギフトの概念の紹介に留めるので、2...Kg6後に黒が成功する具体的な手順の考察は省きます。
 ではさらにその前の手の1...Kxh71...Kh8に変えてみましょう。
1...Kh8 2.Ng5!
 ナイトを攻撃に参加させ、さらにクイーンのためにd1-h5ダイアゴナルを開放する手。3.Qh5、4.Bg6+、5.Qh7#という狙いがある。
 白は勿論2...Bd3(d3でなくてもいい)として1ポーン得で満足することもできます。
2...g6
 3.Qh5を防ぎ、...Kg7と逃げるためにスペースを明け渡し、続いて...Rh8としてhファイルを防御しようとしている。
3.Qf3
 やはり4.Qh3、5.Bg6+ 6.Qh7#の狙い。
3...Kg7 4.Qh3 Rh8 5.Nxe6+ fxe6 6.Qh6+ Kf7 7.Qxg6+ Kf8 8.Bh6+ Ke7 9.Qg7+ Ke8 10.Bg6#
 またしてもメイトされてしまいました。
 ちなみに4...Rh8以外では、5.Bg8!(5...Rh8を遮断している)5...Rxg8(5...Qxg5 6.Qh7#)6.Qh7+ Kf8 7.Qxf7#
 どうやら1...Kh8でも厳しいようです。
 この場合でも、ナイトがg5に跳ねる手の後に白の苛烈な攻撃が続くことになります。しかし2...Kg6の場合同様、局面次第では黒の防御が成功する場合もあるでしょう。今回はグリークギフトの概念の紹介に留めるので、1...Kh8後に黒が成功する具体的な手順の考察は省きます。
 
~~~まとめ~~~
 以上よりグリークギフトの重要な要素とは、
①攻撃の駒:d3ビショップ、f3ナイト、クイーン、(e5ポーン)。
 局面によってはe5ポーンが居なくても黒に十分な負担をかけることができるでしょう。
②攻撃の拠点となるマス:h5,h7,g5。
 攻撃の駒が揃っていてもこれらマスが安全でなければいけないので、黒は例えばf6ナイトやe7ビショップが居れば何の問題も無いことになりますね。
③攻撃に必要なライン:b1-h7ダイアゴナルが通っていること、d1-h5ダイアゴナルが通っていること。
 クイーンは別にどうしてもh5に行かなければならないわけではありません。hファイルに移動できることが肝要です。
1...Kh8 2...Kg6 3...Re8 それぞれの手の後の複雑な手順で白の攻撃が失敗すれば、白はただのビショップ損になるというリスクを負っている。
 至極当然のことですが、いつ如何なる時も成功するサクリファイスなどあるはずがありません。冒頭の※注意※でも触れましたが、手順を暗記するだけではグリークギフトを使うには到底不十分です。
 
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 ここまで閲覧して頂きありがとうございました。
 
 Part1では最も簡略化された局面を使って解説しました。
 Part2ではさらに駒増やして(白:h1ルーク、h2ポーン。黒:e7ビショップ、c8ビショップなど。)解説します。