こんにちは、skramchiです。本当は先に「Queen vs. Rook」に関するエンドゲームの記事を書くつもりだったのですが、エンド本(SILMAN'S COMPLETE ENDGAME COURSE や、PANDOLFINI'S ENDGAME COURSE、チェスクラシックス・シリーズから④終盤の基礎知識、⑦終盤の300題など。どれも良書です。)を読みながら書くつもりが、ほかに読みかけのチェス本があったことを思い出してしまい、完全に放置されて手つかずに……。そのうちしっかりと考察して記事にしたいと思います。
今回もまたモノポールさんとの対局の解説です。Time-Controlは45|45。結果はモノポールさんの勝ちでした。
それでは詳しく解説していきます。
1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 Bg7 4.e4 d6 5.Nf3 O-O 6.Be2 e5 7.O-O Nc6 8.d5 Ne7 9.b4 Nh5
一般的なKing's Indian Defense: Bayonet Attack, 9...Nh5の変化。
10.Ne1?!
この低く構える手は早々にc5突きを狙う強気な9.b4と嚙み合いません。推奨手は10.Re1。
10...Nf4 11.Nd3 Nxe2+ 12.Qxe2
黒は自分のナイトと白マスビショップを交換します。検討時に分かったことですが、興味深いことに、この時お互いに自分の方が良くなったと感じていたようです。
白は閉じた局面でバッドビショップと敵のナイトを交換できたことについて。
黒は白陣の白マス(g4やf3やe4)を守るピースを排除したことについて。
また11.Nd3でf4マスへの利きが二重になりますが、白がこのナイトを取ると...exf4によって大ダイアゴナル(a1-h8)がオープンになり、黒のフィアンケットビショップの脅威が白陣に襲い掛かります。よって白はこのf4ナイトをすぐには排除できません。白がこのナイトを排除できる体制が整うまで、黒は白陣に侵入した強力なナイトを、しばらくこの場に留まらせることができました。
12...f5 13.f3 f4 14.c5 g5 15.cxd6 cxd6 16.Bd2 Rf7 17.Rac1 Ng6
白はクイーンサイドで、黒はキングサイドでお互いにサイドアタックの準備を進めています。
18.h3?! h5 19.a4?! Bf8?! 20.Nf2 Rg7 21.Be1 Nh8 22.a5 a6
お互いにいくつか不正確な手が続きます。
18.h3?! は白が自らキングサイドの局面を進行させてしまっている手で、例えいずれ必要になる手だとしてもここは18.a4とするべきです。
そして18...h5によっては黒のg4突きの準備が終了します。g4マスへの利きの数では白の方が多いですが、19...g4 20.fxg4 hxg4 21.hxg4のあと、白にはこの1ポーン分の得はありません。(…Nf7,…Nh6など、もしくは…Nf7,…Ng5! そして…f3)
よって白は19.a4?! ではなくすぐさま19.Nf2とするべきです。同時に黒も19...Bf8ではg4突きのチャンスを失います。
23.Na4 Bd7! 24.Nb6 Bb5 25.Nd3 Rd8
白にとって難しい局面。
黒は既にg4突きの準備が出来ているので、白は一刻も早くクイーンサイドで反撃を行う必要があります。しかし一見良さそうに見える23.Na4では本譜のように黒の白マスビショップが斜線を変えて白陣に突き刺さります。
黒にとっては攻撃の要であるg4のブレイクポイントを支えるビショップが居なくなりますが、白はナイトとクイーンの2ピースがg4の支えから外されてしまいます。
白のb6ナイトは敵陣に侵入して威力を発揮しているように見えますが、このナイトは単体で突出しているだけで他のピースと連携できていません。b5に白マスビショップが居座っていることでポーンを動かすこともできないため、白のクイーンサイドでの作戦は事実上頓挫することになります。そしてこの後白はドロー以上を見込めない防衛線を延々と続けることになります。
そこで白が自陣にマテリアル損を強いつつもクイーンサイドに望みをかけようとします。
if 25.Qb2!? Rb8!
黒はいつでもf1ルークを取ることが出来ます。25...Bxf1?! 26.Nxa8 Bxg2 27.Kxg2 Qxa8 28.b5 axb5 29.Qxb5 とお互いにルークを取り合うと、黒はポーンアップですが白にも十分なチャンスが残ってしまいます。
このように23.Na4ではどのように変化しても白にとって面白くありません。そこで、
if 23.Nb1! Nf7 24.Na3
このようにナイトをa3にマヌーバリングすることで黒の...Bb5! を牽制しつつ、a5-e1ダイアゴナルを繋ぐことでa5ポーンに紐をつけ、b5突きの準備ができます。
26.Rc3 Nf7 27.Bd2 Nh6?! 28.Nc4 Qf6?!
27手目と28手目で黒は常に...g4とできます。
27手目で黒は...Ng5と展開する選択肢を放棄してしまい、28手目はほとんど意味がありません。
白は望みの無いクイーンサイドを諦め、d3ナイトのピンを外しました。
29.Nf2 g4 30.fxg4 hxg4 31.hxg4 Bd7 32.Rfc1 Nxg4?! 33.Nxg4? Bxg4
白にとって最後のチャンスがありました。33.Nb6! Bb5 この時f1ルークがいなくなっているために...Bb5の威力が弱まっています。そして34.Nxg4! Qh4 35.Qf3 Qxg4 36.Rc7 で完全に互角になります。
本譜では交換後に残った黒の白マスビショップがf3マスを狙っています。
34.Qf2 Rh7 35.g3??
自らf3を明け渡す悪手。
35...Qh6?
単純なメイト狙いですが、35...f3! から36...Qh8! を狙った方が余程強いです。
36.Kf1??
36.Qg2が絶対手。しかしそれでも黒の方が優勢。
36...Qh1+ 37.Qg1 Qxe4 38.Re1 Qxd5 39.Nb6?? Qxd2 0-1
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ここまで閲覧して頂きありがとうございました。
「Queen vs. Rook」についてもそうですが、毎週日曜に対局を行っているので時間があればこのように記譜解説の記事も書いていきたいと思います。