Blogs
Caro-Kann Defense

Caro-Kann Defense

metasta
| 0
 カロ・カン・ディフェンスは 1.e4 に対する黒の最も手堅い応答の一つ。世界チャンピオンのミハイル・ボトヴィニクやアナトリー・カルポフも好んで指す。
 
1.e4 c6

 これがカロ・カン・ディフェンス。黒はフレンチ・ディフェンス(1...e6)と同様、d5 にポーンを確立して中央の白マスを支配しようとしている。1...c6 は 1...e6 に比べ c8 ビショップの中央進出を妨げないという利点がある。

 グランドマスターはここで 2.Nc3, 2.Nf3 や 2.c4 を選ぶことが多いが、一般に最もよく指されるのは次の手。

2.d4

 d4、e4と中央に2つポーンを並べることを黒が許したのなら、ふつう白はそうすべきだ。

2...d5

 予告通り黒は中央へと突っ込み、e4 のポーンを攻撃する。

 ここで白の手は大きく3通りある。

  • 3.e5 (アドヴァンスト・ヴァリエーション)
  • 3.exd5(エクスチェンジ・ヴァリエーション)
  • 3.Nc3(クラシカル・メインライン)

 また 3.f3(ファンタジー・ヴァリエーション)も最近人気で興味深い手。

3.Nc3

 クラシカル・メインライン。駒を展開しつつ e4 ポーンを守る最も自然な手。3.e5(アドヴァンスト・ヴァリエーション)はポーンを交換せず中央をロックするため閉塞的な局面となる。他方 3.exd5(エクスチェンジ・ヴァリエーション)さらには続けて 4.c4(パノフ・ボトヴィニク・アタック)と指すとより開放的な局面となる。

3...dxe4

 黒は局面を少し打開すべく e4 と取る。黒が d5 ポーンを e4 と交換する流れはフレンチ・ディフェンスのルービンシュタイン・ヴァリエーションに近い。違いは白マスビショップを展開できる点。

 こうした中央でのポーン交換の後では、白はより多くの陣地を得、黒は c5 などから中央を奪還する対抗手段を持っている場合が普通。

4.Nxe4 Bf5

 白マスビショップをすぐ展開できる点が、フレンチ・ディフェンスとの最大の違い。フレンチ・ディフェンスも手堅いが、複雑な計画と駒の展開を両立しやすい点でカロ・カンはさらに手堅い選択である。

5.Ng3

 ビショップを避けつつ反撃し、テンポを得る。

5...Bg6

 ビショップは最も自然なマスへと退却しつつ中央を睨み続ける。

 白はここで 6.Nf3 のように普通に駒の展開を続けても全く問題ない。しかし、この局面では一見奇妙なある手が昔から知られ、現代でも最も強力な手と認められている。

6.h4

 ふつうオープニングで端のポーンを突く手は慎むものだが、今回は次に h4-h5 でビショップを奪うという深刻な脅威を生み出す手になっている。

6...h6

 黒は冷静にビショップの退路を開ける。

 h4-h5 からの急襲はもうなくなったので、ここで白は単に駒の展開を続ける。

7.Nf3

 次に白 Ne5 とされると黒にとっては少々厄介。この早期にキングサイドの白マスで戦いが起こるのは黒にとって不都合なので、次の手でそれを防ぐ。

7...Nd7

 白 Ne5 を許すと黒は白マスビショップと f7 ポーン両方に大きな圧力をかけられてしまうので、先にナイトを展開してそれを防ぐ。

 白もそろそろ白マスビショップを展開する頃だが、その前に少し陣地を稼ぐ。

8.h5

 白はこの手でキングサイドに少し陣地を増やす。この広さは後々効いてくる。

8...Bh7

 ここで白にはビショップの展開先がいくつか考えられる。Be2 や Bc4 ももちろん自然で良い手。ここではメインラインを追う。長い実績があり、白がオープニングから優勢をつかむチャンスが最も高いと考えられている手だ。

9.Bd3

 黒ビショップが長い斜線上の好位置にいるので、交換により消してしまう。かつクイーンを展開する時間も稼いでいる。これは記憶に留めておくべき重要なアイデアだ。

9...Bxd3

 白から Bxh7 と取られると黒はルークを h7 へとつり上げられ形を崩されてしまうので、これは取る一手。

10.Qxd3

 もちろん c ポーンで取ってしまっては d ダブルポーンを作ってしまい無意味。

10...e6

 最も自然な手で黒マスビショップの道を開ける。

 ここでキングサイド・キャスリングも合理的な選択。だがメインラインはより野心的だ。

11.Bd2

 この局面ではクイーンサイド・キャスリングを選ぶ方がグランドマスターにとっては主流だ。それを準備する手。

11...Ngf6

 黒はすべての駒を中央へと自然な駒の展開を続ける。

 まだここからキングサイド・キャスリングすることもできるが、h ポーンを h5 まで進めているため、クイーンサイドの方がやや理に適っている。

12.O-O-O Be7

 Bd6 ももちろん良い手。

 白はここからさまざまな戦略をとりうる。そんなとき、多くの戦略に共通して使える手から指していくというのはひとつ良い方法だ。

13.Kb1

 キングを隅へと寄せることで、少し安全度が増した。このあと中央支配をさらに強めるか、あるいは黒のキングサイドを攻撃するか、白にはここでもなお選択の余地がある。

13...O-O

 Qc7 からクイーンサイド・キャスリングを選ぶことも多い。現状、白の方が陣地が広い分わずかな優位を保っている。相手と逆側へのキャスリングは激しい中盤戦を生じうるので、もしそれを避けたいのなら黒はクイーンサイド・キャスリングを選ぶべきだろう。

 ここからは中盤戦。局面は概ね均衡している。互いに逆側へキャスリングしているので、相手のキングに早く攻撃を仕掛けることが両者にとっての目標となる。白は次の手から攻撃を仕掛けていく。

14.Ne4

 白は g ポーンの道を開け、g2-g4-g5 と進めて黒キングを狙う。先に h4-h5 と進めておいた手はここで役立ってくる。対する黒はクイーンサイドや中央での逆襲を狙い、c5 のような手が選択肢として挙がる。直前で黒がもし Qc7 からのクイーンサイド・キャスリングを選んだ場合、ゲームはより緩やかで守備重視に進行する。