Pirc Defense

Pirc Defense

Avatar of metasta
| 0

 ピルツ・ディフェンスはやや珍しいが、黒にとっては十分に好ましい選択肢の一つ。

 (誤って「パーク」と発音されることが英語圏でも多い)

1.e4 d6

 この手がピルツ・ディフェンス。白にあえて中央ポーンの好形を許し、しかもフレンチやカロ・カンのようにすぐそれを反撃することもしない。代わりに黒はのちのちオープニングからミドルゲームへの移行前後で、この中央の白に攻撃をかける。このように黒がオープニングの原則をあえて破り、他の目的を目指すオープニングを「ハイパーモダン」と総称する。

 黒が d4 のマスを取りに来なかった以上、次の白はオープニングの原則に則ったこの手。

2.d4

 中央を支配し、駒の展開のため道を開ける。

2...Nf6

 白の e ポーンを攻撃するが、黒自身の e ポーンをどうするかはまだ不明。

 白はここで Bd3 Nc3 かの 2 択。一般的にはナイトを先に展開する方がより柔軟だが、今回白の白マスビショップは好位置がいくつも選べる。

3.Nc3

 駒を展開しつつポーンを守る。

3...g6

 黒マスビショップのフィアンケット。これがピルツ・ディフェンスの大きな特徴の一つ。黒は中央を乱そうとせず、まずはキングサイドの展開を進めることに専念する。

 白は駒の展開に選択肢が多い。g3 から Bg2 という手順のほか、Nf3, Be2 から O-O としたり、あるいは Be3, Qd2 から O-O-O として、シシリアン・ドラゴンに対するユーゴスラヴ・アタックのように進行する場合もある。さらに、ここで白には極めて野心的な選択がある。

4.f4

 オーストリアン・アタックと呼ばれるこの手は信じがたいほど攻撃的だ。白は大きな陣地の優位を得つつ、e4-e5 から速攻で黒を倒す可能性も含んでいる。これよりはずっと穏やかな Nf3, Be2, O-O などの手でピルツ・ディフェンスに対処する道もある。その場合黒は Nbd7, O-O から後に e7-e5 または c7-c5 と中央を反撃してくることが多い。

4...Bg7

 もちろん黒は慌てる必要などない。仮にもし白が一直線に勝ってしまうなら、ピルツは誰にも指されずとうの昔に大会から消えていただろう。

 すぐ白 5.e5 とする手は実際効果がない。5...dxe5 6.fxe5 Nd5 と進んだ局面は黒にとって好形。

5.Nf3

 白は単に駒の展開を続ける。

5...O-O

 ここでは 5...c5 から激しい変化もあり、6.Bb5+ Bd7 7.e4-e5 と非常に難解な局面が生じる。経験則としては、複雑なオープニングを選ぶならそのぶん、対局前によく準備しておいた方がいいだろう。

 ここで白は攻撃的になり過ぎたり、e4-e5 と急いで陣地を拡げたりしないことが大切。黒はすでにキャスリングを済ませている以上、中央が開放されたとき危険に晒されるのは白の方だ。

6.Bd3

 このあと白は O-O, h3, Be3 などといった手がある。小駒を展開しやがては e4-e5 と中央をさらに拡げたい。対する黒はいくつか駒の展開先があり、c7-c5 を支えるため Na6 とするか、あるいは Nc6, Bg4 から e7-e5 とも指せる。黒にとって c5 e5 のどちらかを達成することは白の空間的優位を揺るがすために極めて重要で、そうしないと黒はひどく受動的な局面に追い込まれる。