
Reti Opening
チェスの偉人リカルド・レティの名を冠したレティ・オープニングについて。
1.Nf3
レティ・オープニングの目的は「オープニングの理論」に沿った進行を避けること。1.Nf3 という極めて柔軟な初手により、ゲームの幅は最大限に広がる。当意即妙のオープニングを求めるプレイヤーにとって最良の選択。
1...d5
この手以外にも 1...Nf6(依然としてオープニングの形を定めない)や 1...c5 (白 2.e4 ならシシリアンへ、2.c4 ならイングリッシュへと移行)など、明らかに黒の選択肢は多い。
2.c4
これがレティ・オープニング。このあと白は g3, b3 から両側のビショップをフィアンケットする戦略をとることが普通。なおここで 2.g3 から 3.Bg2, 4.O-O と最短でキャスリングする変化がキングス・インディアン・アタック (KIA)。
2...e6
黒は QGD 風の手で中央のポーンを守る。2...c6 とする変化もあり、この場合はスラヴ・ディフェンスに似た進行になる。
レティにはイングリッシュと同様、クイーンズ・ギャンビットへと移行する変化が多い。
3.b3
白は d2-d4 から QGD へと移行する代わりに、単にフィアンケットを準備し、中央のポーンの柔軟性を保つ。
3...Nf6
黒は落ち着いて QGD 同様に駒を展開する。
クイーン側のビショップをフィアンケットすることで、局面は開放的かつ中央の柔軟性が高いという「見馴れない」ものとなる(レティでは一般的だが)。このことがレティを非常に興味深い選択にしている理由の一つだ。
4.Bb2
必然の展開。
4...Be7
ここでも黒には多くの選択肢があるが、この手は自然で説明不要だろう。
5.g3
見ての通り、レティは攻撃的なギャンビットで相手を殺しにかかるようなオープニングではない。白が望んでいるのはあくまで調和の取れた駒の展開、キャスリング、そして興味深く開放的なミドルゲームだ。
5...O-O
黒も特段変わった手は指さない。駒を展開し、中央を支配し、キャスリングする。
6.Bg2 c5
白が d2-d4 を指さないので、黒は中央の陣地拡大を狙う。
7.O-O
当然の手。
7...Nc6
7...d4 から b2 のビショップを閉じ込めようとする手も興味深い。その場合白は a1-h8 斜線をこじ開けるべく、e3 などからこの d4 ポーンを弱体化する手が通常考えられる。
8.e3
白はビショップの斜線を保ちつつ d4 のマスを支配する。
8...b6
黒もフィアンケット。e6 が自分のポーンで塞がれているので、これが c8 のビショップを展開する最も自然な方法。
9.Nc3 Bb7 10.cxd5
白は全ての駒を展開し終え、そろそろ中央の構造を決める頃。もし黒の側からこのポーン交換を行うと、黒は中央のポーンを 1 つ減らしてしまい白を利することになる。
10...exd5
ナイトで取り返す手も可能。
11.d4
白はここで d4 と指し、黒の d5 ポーンを止める。もし黒が d4 を取れば、互いに取って取り返したあと黒 d5 ポーンが孤立して将来の弱点となる。もし黒が緊張を保てば、白は Ne5 から主導権を握るため動くか、または dxc5 として黒の d5, c5 ポーンを「ハンギング・ポーン」(2 つ横並びになっていて両脇に味方のポーンがないポーン。局面によって強みにも弱みにもなる。宙吊りのポーン、の意)にする。他方、まだ黒にとって差し迫った危険はないため、黒は全ての駒で中央に狙いを定めていく。Rc8, Qd7, Rfe8(またはRfd8)など落ち着いた手が好手。