naruzoが加藤一二三の名言(上達編)を教えるよ。
さて・・・。
前回、花村元司九段の上達法を書かせていただいた。
その中で花村は、早差しを推奨していたワケですが、今回は「1分将棋の神様」
と言われた加藤一二三九段のお話をするよ♪
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「確かに、秒読み将棋の経験者としては全棋士中、私がナンバー・ワンでしょう。
しかし、だからと言って、私が秒読み将棋にとくに巧者であるとか、
秒読みは自分の専売特許であるなどとは考えていません。
むしろ、私の場合、秒読みに追い込まれて見事勝ち切ったという将棋より、
秒読みになったためにあたら優勢な将棋を落としてしまったという
ケースの方がずっと多いのです」 加藤一二三
「だから、秒読み将棋の必勝法というものがもしあるとすれば、
私は正直に申し上げたい。
それは、秒読みに追い込まれないように指すと言う事です。
秒読み将棋必勝法は、相手を秒読みに追い込み、自分の方は残して指す。
というのがノウ・ハウかもしれませんね。
アッハッハ。マジメな話、私の場合「一分将棋の神様」というような
ニックネームは返上したいですね。
最近は、なるべく最終盤で時間が余るように指し、少し勝率も上がってきましたから。
タイトルを目前にしながら、秒読みによってすべってしまった、
ころんでしまったという痛恨事の方が、私の場合ずっと多いのです」 加藤一二三
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みなさんの「そんなの当たり前じゃん」という声が聞こえてきそうだが、
話は徐々に確信に迫って行きます。
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「そうですね・・・秒読みになってからの慌て方と言うのは、アマ・プロ同じと思います。
なるほど、盤上の技術においてはアマと我々では相当の開きがあります。
しかし、残り30秒とか、10秒になった時、全く一人の人間として、沈着冷静さを失ったり、慌てたりする点ではやはり対局者の地というか、人間の地が出てくるものです。
その点では、アマ・プロの間にそう大きな差は無いと見ますね。
秒読みと一口に言っても、攻めなければいけない局面、受けに回る局面、攻防あわせ考えなければいけない局面、優勢の局面、非勢の局面・・・と千差万別でして、そのつど新しい局面に出会っていると言った方がいい。
だから、秒読みの心得を言うにしても、実にケース・バイ・ケースなのです」加藤一二三
「何度も言いますが、秒読みに追い込まれないように指す事の方が、秒読みになって慌てるよりもずっと優れている。そのことを大前提にしながら、私のこれまでの経験を生かして、何かモノをいうことがあるとすれば、それは
『予定変更・その害』ということについてですね・・・」 加藤一二三
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加藤一二三九段(1940~)は、最近ではネタにされることも多いが棋界最古参の棋士。
戦前生まれの名人経験者最後の存命者である。
「一分将棋の神様」「神武以来の天才」の異名を持ち、14歳でプロ棋士という最年少記録は、半世紀以上すぎた今もなお破られていない。
18歳でA級昇級。A級2年目の1960年には初の名人戦挑戦(敗退)。1982年の名人戦では、中原名人を相手に4勝3敗・1持将棋・2千日手という実質10番勝負を制し、初挑戦から苦節22年念願の名人位を獲得する。誤解のないように言っておくが、加藤九段は、「秒読みの神様」であり「早指しの神様」ではない。常に最善手を追及するあまり、序盤から長考し終盤に秒読みになることが多い、しかし、そこからがまた強く、その強さから、NHK杯では、羽生、大山に続いて歴代3位の優勝経験者だ。なお、本人は敬虔なクリスチャンである。
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「私ども専門家が対局終了後、色々と調べていますと、予定変更による失敗がどんなに多いかを痛感しますね。『エッ!そんな手があったの・・・』と驚かされるような事は割合少なくて、むしろ『確かにその手は頭に浮かんだが、指さなかった』と悔やむ場合がほとんどです。と言う事は、中・終盤、ギリギリの瀬戸際で、手の選択を誤る為に、自ら負けていったことを示しています・・・」 加藤一二三
「私がどうしてこんな『予定変更』の話をするかと言えば・・・将棋の上達を志す人にとって、『この手が良かった、この手が悪かった』の検討など、ほとんど意味がないと思うからです。大切な事は、『なぜ自分で良いと思った一手を指さなかったのか』『なぜそのようなミスを生じるのか』なのです。ここを突っ込んで考えないと秒読みの実戦心理上のブレという問題解明に行きつく事ができない・・・」 加藤一二三
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・・・ちょっと話が長い?書いてる方も大変だよ・・・でもオイラは負けないよ。文字たちが躍動する文章をみなさんにお見せしたいね・・・。
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「時間切迫、秒読みのなかでも、人は自分の棋力に応じた最善手をパッと発見するものです。それは、盤上最善手ばかりでなく、『なんとなく、こう指しておく方が相手は困るだろう』というような実戦的な最善手のこともある。大切な事は、アマ初段はアマ初段なりに、三級は三級なりに最善手の直感的発見をするものです。その手をなぜ他の手に変更するのか。それは、内面のめまぐるしい動きによるものです。30秒将棋といっても30秒の間に人の心は様々に揺れ動きますからね。最善手とは思いつつ『しかし、相手が〇〇と指せば、その後がわからない』などと自己規制し、手を変更してしまう」 加藤一二三
「だから、手を変えるという問題を追及していきますと、結局はその時の心・技・体の充実ということに突きあたります。手の変更を生むものは、その2手前、自分の手番の時の心の動きと関係し合っている。2手前のさらに2手前、と掘り下げていくと、結局は初手のところまでいきます」 加藤一二三
「その一局を指すにあたって、自分が気力充実していたか、どこか肩に力が入りすぎていたり、気合いが入らなかったり、疲れていたり、相手を恐れていたり、逆に軽く見ていたりすると必ず中盤以降に動揺が起こり予定変更を来す。指し手の予定変更がうまくいくケースは、実戦の2割あるかどうかだと思います。秒読みで勝つ、というのは、相手が予定変更に回り自滅の道を辿ったか、最後まで自分が落ち着いて、ミスをしなかったか、その二つに一つです」 加藤一二三
「・・・(中略)・・・普通は後の展開を考えてから逃げる方が得の様に思いますね。しかし、これは一面的な見方でして、実際は逆です。確かに25秒・・・6・・7・・とギリギリまで考えて玉が逃げるのは、数の上では計算が合っていますが、その一局を”勝負”という点からみれば、とたんに計算は合わなくなります。ギリギリまで考え、ヨミを入れて逃げる事を続けていると、頭の中で考えた事が尾を引き、人間は必ず心の中にさざ波が立つのです。つまり、捨て身になれなくて自意識にとらわれ、直感の手を疑うようになり、ついにはしなくてもいい『予定変更の一手』を指してしまうわけです・・・」加藤一二三
「だから、『わかりきっている一手』を指さねばならないような局面では、『あとのことを考えず、そのわかりきっている手をまず指し、心を平静に保つ』ことが大切です」 加藤一二三
「秒読みでわかりきった手は、考えずに指せ、と私は言いました。しかし、厳密な意味ではこれもケース・バイ・ケースでして・・・ヨミを入れつつ粘った方がいい場合もある。一般的に言うと、攻めと守りとを同時に考えねばならない局面は秒読みに適していない。攻め一方、受け一方という局面の方が向いている。大山名人、中原名人の強さは、こちらを秒読みに追いこんで、敵陣と自陣の両方を見比べなければならないような局面をつくるところにあります。つまり、相手が慌てるように、迷うように仕向け、ついには予定変更を重ねさせ、ミスを出させる。プロ棋士たるもの、多かれ少なかれそういう勝負にカラいところがある」 加藤一二三
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かなり話が長くてみなさんお疲れでしょうが、もうちょっと続きます。ここからは読みたい人だけ読んでください。
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「繰り返すようですが、私たちが負けるのは、好手、妙手に気が付かなかったというよりも、一度は頭にひらめきながら、それよりもこちらの方がよいと思って指した手が、実は疑問手だった、ということによるものの方が多いのです」加藤一二三
「特に、一手1分、あるいは30秒など時間の無い時は、平凡な手で勝ちたいと思いがちで、なるべくつらい川は渡りたくない、危ない橋を歩きたくない・・・と心が保守的になってしまうものです。冒険だが、この一手こそが最短の勝ちだろうと思えば、その一手を迷わずに選ぶことが、上達にとって必要です」 加藤一二三
「せっかく最善手が頭にひらめきながら、秒読みに追われて『その先がわからない』と、手を変えてしまい、負けるケースが多い。しかし、結論的に言えば、秒読みの中で最善手Aが浮かんだのであれば、その心理状態さえしっかり維持していれば、先へ行った局面で最善手Bが浮かぶものです。断っておきますが、最善手と言う場合、その人にとっての最善手でして、つまり自分の持てる力を落ち着いて100%発揮し続ける人が秒読みでも強い、ということです」 加藤一二三
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・・・とりあえず今回はここまで。
加藤九段曰く、強い心を養う事が上達には不可欠だという事だ。チェスの本を買ってもダラダラ読んで、全然身に付かず、結局は途中で読むのをやめて、また本を買う。そんな人、多くない??naruzoは大体本は2~3日で一回バーっと読んじゃう。当然頭にはあまり入らないけど、2度3度読む時の吸収感はハンパない。チェスでも将棋でもそれ系の本は間を置いちゃ駄目なんだ。とりあえず強い心で一回読み切ってしまおう。一回読んで全て頭に入るワケないんだから、大事なのは2度3度読む為の地頭形成だからね。
次回は、加藤九段の続編。
なぜ加藤九段は長考派なのか?そのきっかけから上達法を紐解いていくよ♪ ちゃんちゃん♫